2009年05月14日

香辛料市場の暗部 そのいち

リスボンなどで受諾できる、
香辛料市場の暗部。

ポルトガル出身の軍人さんであれば
一度は受けたことがある人も多いでしょう。

今回は、このクエストを元に
ネタにして小説?を書いてみました。

今回はその序章です。
では どうぞー

西アフリカの暑く乾いた風が抜けていき、
メインマストの先端に掲げたバラの意匠を凝らした
商会旗がはためいている。
ライラック商会艦船の証である。
「後ろの艦はちゃんとついてこれてるか!」
顔中から汗を噴き出しつつモナカは
メインマストの見張り台に居る係りに声をかける。
アン・コ・ワガーシ号の船長であり、
今回のライラック商会西アフリカ交易艦隊の提督である。
「だいじょーぶぅーですぜぃー!後ろのぉー3隻ともー!
しっかりとぉー!ついてきてやすー!」
頭上からの声に、それでもモナカの表情は厳しいままだった。
ここ数ヶ月、ライラック商会に関係する香辛料船、
主に西アフリカ、アルギン港からの"ゴマ"を
主な商品として運んでいる船が海賊に襲われている。
そして今航行している場所こそ、
様々な情報から推測された、
襲撃ポイントの最有力エリアであった。
モナカが表情を緩めることができないのも当然である。
(そもそも僕には向いてないんだよな・・・)
モナカは、きびきびと、
そして油断なく船員たちに指示を飛ばし、
(僕は学者肌なんだし、荒事は苦手なんだよなぁ・・・)
後続の3隻へも、
旗やメガホンを駆使して情報共有に勤め、
(でも・・・商会長命令には・・・逆らえないよ・・・なぁ・・・はぁ・・・)
心の中だけで盛大に
愚痴とため息を連発しまくる。
(失敗したら・・・シッパイ・・・し・・・いやいやいやいやいやいや、そんな恐ろしいことは考えたらダメだ!士気に関わる!)
しかし心の愚痴は素振りも見せず、
的確な指揮を下していくモナカ。
本人も気づかないくらい小刻みにカタカタと揺れる
彼の額から新たに流れた汗が
ポタリ、ポタリと拭う間もなく落ちていった。

今回のアフリカ交易艦隊を旗艦として指揮する一件、
普段のモナカであれば、
絶対に了承してはいなかった。
ではなぜ今回に限って了承し、
あの暑いアフリカの海を渡ることになったのか、
これを話すには少し時間を戻す必要がある。
それは1年前の出来事であった。

「アフリカの香辛料航路に新規参入するわよ!
異議、他意、反論、反乱、異見は認めません!」
[商会メンバーは急遽リスボンに戻り、商館に集まるように!]
との召集令状を
アテネの酒場でリスボンからの船乗りに手渡されたモナカは、
急ぎ高速船にてリスボンへ帆をあげた。
そしてリスボンに着き、商館の商会長の元へと急ぎ赴き
執務室のドアを開けた瞬間、ミャウ商会長の第一声が、
アフリカ香辛料航路に新規参入するから、全力を尽くせ!
とのお達しだったのだ。
「えっ・・・ちょ待って下さい。商会長!
いくらなんでも無茶で無理が過ぎるのでは・・・。」
モナカは反論厳禁と言われていることは理解しつつ、
反論せずに居られなかった。
それもそのはず、アフリカの香辛料、
特にゴマを中心とした航路は、
中華艦隊と呼ばれる一派が独占している。
武力も影響力も半端ではなく立ち向かうことは
無謀といわれているからだ。
「・・・反論は許さない・・・って言ったと思うけどなぁ・・・
モナカくん・・・。」
ニコニコとした微笑の商会長ミャウがそう言った。
モナカはこのプレッシャーにガクブルし、
後少しで数滴チビルぎりぎりであったと回想しているのは
重要な供述として記録に残すべきであろう。
「・・・でもモナカには
しっかりと事情を説明する必要があるかしら・・・ね。」
そう言ってミャウは控えていた秘書官と自艦も副官も下がらせ
人払いをする。
ミャウはモナカふたりきりの空間になったことを確認し、
語り始めた。

「常識だとは思うけど、
1415年にエンリケ王子がセウタ攻略を成功させ、
アフリカから食を中心とした文化が伝播して
以来、80年以上もたつ今日、
北アフリカを中心としたイスラム文化下の様々な食材、
特に香辛料に分類される物には、
コリアンダー、ジンジャーそしてゴマ、
これらをはじめ多数の食文化が流入していることは
知っているわね。」
ミャウの問いかけにモナカは頷いた。
モナカの頷きを確認しミャウは続けた。
このあたりの事情は航海者は元より、
一般人も初頭学校では絶対教えるほどの常識である。
学校に通えない貧困層の人間ですら知っている。
「近年、ゴマが美容に効くという噂もあいまって、
空前のゴマブームがイベリア半島のここリスボンを中心に
発生している。
・・・火付けは酒場のクリスティナなんだけどね・・・
それはともかく、ゴマが需要過多な状況らしいのよ。」
(ゴマのブームは知ってはいたけど・・
まさか酒場のねーちゃんから発振していたとは・・・)
モナカは少し呆れてつつ、
それはまったく表情に出すこと無く聞き返す。
「そのブームに乗れば儲かることは理解できますが、
アフリカを中心とした香辛料の航路は
俗に言う中華艦隊と呼ばれる
集団が独占しており、新規参入は難しいと思うのですが・・・。」
ミャウは、
モナカの疑問は当然であろうといった顔を隠すこと無く頷いた。
「確かに、藪つついて蛇に噛まれる・・・
といった状況でしょうね。
しかもその蛇は毒蛇も毒蛇、
猛毒持ちと言っていいと思っているわ。」
だったらば何故・・・
と言った顔をしたモナカを制してミャウは続ける。
「もちろん、いつもの私だったら、
そんな不利な賭けはしないわよ。
それは副商会長として長年に私を支えてくれたあなたが
一番よく理解しているでしょ。」
(確かに・・・
ミャウ商会長は常に商会と自分の権力を第一に考えている。
無謀な賭けは絶対にしない人だ。)
モナカはミャウ本人に聞かれたらケチョンケチョンにされ、
ボッコボコにされ、
ペンペン草も残らない・・・
そんな状況になりかねないようなことを思いつつ、
しかも完璧にバレナイような顔つきで神妙
(もちろんモナカ本人も事の重要性に気づいていたからでもあるが)に頷いた。
「・・・でも今回は引くわけにはいかないのよ。」
ミャウは小声で呟いた。

モナカの厳しい顔にアフリカの熱砂による風が吹き付けていく。
「僕は、ミャウさんの思いはよく分かる・・・。
そして今回は絶対に失敗が許されない。」
ミャウが、
ライラックローズ商会の香辛料交易路新規参入を決定してから
1年、送り込まれた交易船団は数十になる。
そして参入後、
最初のころこそ
リスボンに良質なアフリカ産の香辛料初め特産物を
輸送できていた。
が、それも初期のころのみ、
徐々に買い付け妨害やらなんやらが起こり始め、
ここ半年、
ライラック関係の商船団が立て続けに
海賊被害にあう事態が発生している。
そして、ここ最近の海賊被害の頻発から、
今までライラック商会に協力していた雇われ船長達から、
信頼が著しく低下してしまうという事態に陥ってしまった。
そして、
誰が明言しているわけでもないが、
(今回の交易が失敗すれば、
ライラックローズに協力する船は居ないだろう。)
そのような雰囲気がリスボンに蔓延していた。
「だからそこ、
今回は失敗できない・・・のになんで僕ん役目かなぁ・・・。」
今まで我慢してきた、
思わずため息を吐いてしまった
モナカに答えてくれる声は何も無かっ・・・
「せーーんちょーーー!
三時の方角よりぃぃー!
不審船の影ぇぇぇぇ!。」
頭上から大きな叫び声があがった!
航海長、数名の手空きの水夫たちが左舷に集まる。
モナカも新型望遠鏡を目に当てて、
見張りが叫んだ方角を見る。
(相手の商会旗や国籍旗は・・・やはり掲げてない・・・
でものあの特徴的な船体のカラーは恐らく・・・)
「海賊船、接近!
操舵士、進路はちょい西に!
それで逃げ切れる!
砲撃要員には砲撃準備急がせろ!。」
モナカは的確に各員に指示を飛ばしていく。
操舵士は頷き、
手近に水夫に海賊船の動きに注視するように指示し
兵長は、
「自分は砲撃要員と・・・
銃撃部隊の準備の確認もしてしてきます!」
慌てて各準備の確認と指示のため
アッパーデッキ(上層甲板)に向かう。
「水夫長!
後続の艦にメガホンと連絡旗!
急げ!」
アイサー!と水夫長は返事をし
「おらー!
船長の船に追いつけるヤツらが少ねぇ理由は
テメーらがよく知ってんだろー。
優秀な俺らに敵う水夫が相手の船に居るわきゃねーんだ!
キリキリ動けー!」
大声を張り上げて水夫に檄を飛ばした。
水夫長の大声に船は一層慌しくなる。
モナカはその様子をサッと確認し、数秒間、神様に祈った。
(痛いことがありませんように!)と。

数十分後、風向きが変化し帆が大きく膨らみ始める。
風の味方を得て帆はいっそう大きく膨らむ、
ぐんと航行速度もあがる。
神様も今回は(珍しく)にっこりと微笑んでくれた様子だ。
後続艦も事前に予定していた通りに対応し、
アン・コ・ワガーシ号が後ろに回り
他の3隻と海賊船団の間に入るような形に船団の隊形を
スムーズ変えることが出来た。
「どうやら逃げ切れそうですね、船長。」
操舵士が少しホッとしたように声を掛けてきた。
「ああ・・・隊形変更で時間のロスがあるかと思ったけど・・・
思った以上にスムーズだったし、
もう一日も走れば、
ポルトガルの領海に入り沿岸警備艦隊の哨戒範囲にもかかる。
そうすれば相手も諦めるだろう。これならば絶対に逃げ切れる。」
モナカは、
少しずつ距離が開き始めた海賊船団を今だ油断なく見つめ、
しかし落ち着いた声で答えた。
そして頭上の見張り要員に大声を上げる。
「念のため、伏兵に警戒しろー。
後ろだけでなく周囲にも気を配れ!後、風向きの変化にもだ!」
(今回の仕事はどうやら無事に終わりそうだ・・・
良かった・・・本当に・・・)
頭上からアイサーとの声と、
周囲異常なしの報告が返ってくる。
「風も周囲も問題ありませんぜー!」
その声に、モナカもようやくほっとした。
(今回の仕事、失敗してたら・・・)
状況に余裕が出てきたためか・・・
モナカは今まで考えていられなかった余計なことに
思考回路の余剰部分を回し始めた。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
この後の数時間の状況に関しては、モナカの記憶にはない。
しかし周囲の者は
(船長は急にガタガタと震えだし、
目は開いているが話しかけても、
ゆすっても反応せず、
ブツブツと聞き取れない声で呟いていた。)
と供述している。

*もちろん今回も出演者なぞには許可とってません。

*ばれなきゃいいのです。

*続くかどうかは気分次第ですので期待せずに待っててください。
posted by ムササビ at 21:07| 静岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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